合奏練習を円滑に進めるためにはスコアの存在は重要です。自分のパート以外でどのようなことをやっているのかを理解することはCDなど音源を聞いたり練習で注意して聞いたりすることである程度出来ますが、理解を深めオーケストラとしての共通見解を作るにはスコアリーディングが欠かせません。縦横無尽にスコアを読んで深く理解するのは難しいですが、横の流れと縦の線だけでも読みとり演奏に反映することが出来れば、合奏の印象は大分良くなります。

横の流れ

　文章に句読点や段落があるように音楽にも流れがあります。句読点を無視して文章を区切ると意味が変わってきたり、段落が変わることで伝えたいことが明確になったりするのは、文章も音楽も一緒だと思います。 スコアやパート譜を手にして最初にしなければならないことは、練習記号・小節番号の確認です。版が違うと楽譜の内容も若干違ったりします。パート譜やスコアに小節番号や練習記号が書いていないことは良くあることです。練習を円滑に進めるためにはどこを練習するのかすぐにオーケストラ全体に分からせることが大切です。そのためにも楽譜を手に入れたら練習番号などの確認はすぐに行い統一してください。

　音符一つから始まって、小節、フレーズ、その組み合わせ、楽章、全曲と音楽の流れを出来るだけ大きくまとめていくことが演奏会に向けての練習になります。音符、小節は楽譜に明確に書かれていますし、練習記号は大抵音楽の変わり目に置かれ段落に近いものとして扱うことが出来ます。しかし、句読点に相当する部分はスコアから読みとっていかなければいけません。大まかに4小節とか8小節で出来ているフレーズを繰り返すことが多いので、それをスコアから読みとり書き込んでいくのが横の流れをつかむスコアリーディングでの第1歩です。CDを聞く、楽譜を見て音を取る、指折り数えるなどして、ここかと思うところに鉛筆で印をつけて行ってみてください。各人がやってみたら、他人の解釈と比べてみると、その人がその曲をどうとらえているのかが分かると思いますので、議論してオーケストラとしての共通見解を出していってください。

縦の線
　これはもっと明確です。リズムの形などをスコアの上下方向に見て、同じことをやっているパートならばそろえる、違うならば役割に応じて区別する。主旋律、副旋律、伴奏などの役割分担を探して、旋律は表に出す、伴奏は旋律を立てる。役割分担を探しておくことで、合奏の時に周りの状況を把握する助けになります。 あまり難しく考えずに、取りあえずは鼻歌程度に歌ってすぐに思いつくのが旋律、それ以外は伴奏と割り切ってしまいましょう。それ以外にもその部分でのテンポを司っているパート(頭打ち、裏打ちをやっている、細かい動きをしている)を認識してそこに合わせることで、自己陶酔したテンポのない演奏をしないように注意しましょう。

　演奏会プログラムを決めるとき人気投票とパートの力関係だけで決めるのも構いませんが、演奏でどのような技術が必要なのか検討する機会を設けましょう。OBに技術的なことを聞くことも可能ですが、本格的な練習が始まったときのTop会などでの議論にも必要な考え方ですので是非実行してみて下さい。

• 自分の楽器のことよりも、ほかの楽器でここは難しいのではないかというところをそのパートに聞いてみることが大切です。オーケストラでの各楽器の得手不得手を知る良い機会です。
• 現時点の技術レベルでできるかではなく、春なら春、夏なら夏の時期までに技術的に克服できるかどうかを検討してみて下さい。1年間での技術的な伸びがどれくらいであるか実感している、上級生に相談すれば克服できるかどうかの目安になると思います。自分の技術レベルでどこに欠点があるのか見直す機会でもありますし、どういう練習をしなければいけないか課題を決める上でも大切です。
• 曲選びはCD等の音源を聞くことから始まると思いますが、できるだけスコアを手に入れて楽譜を見るようにして下さい(できればパート譜も)。OBに相談して、持っていれば貸してくれると思います。目立たないところでとんでもないことをやらされていることもありますし、耳で聞いた時は平滑化・簡略化されてしまいできると思っても、楽譜はとんでもなく難しいこともあります。見て「音符が並んでいるな〜」ではなく、必ず演奏もしてみて下さい。
• 管楽器の出来は個人の能力によるところが大きいですし、管楽器でのアンサンブルを問題にするとしても、パートで2人、全体でも高々20人程度の能力が揃えば良い演奏ができます。しかし、弦楽器は一つの所帯が大きいですし、一人ががんばってもパートとしての仕上がりにはつながらないところがあります。いくら管楽器が活躍して面白そうだからといって、弦楽器に超絶技巧を要求する曲を選ぶのはどうかと思います。弦楽器なくしてオーケストラは成り立ちません。管楽器パートで技術検討する人はそのことを肝に命じておいて下さい。

　 まじめに技術検討を始めると、曲を決めるまでに険悪な雰囲気になるかもしれませんが、くれぐれも人間関係は壊さないように。